[芹香編] 第4章 西村side

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それから深々と頭を下げたまま、 俺に言うのだ。 「ごめんなさい、 全部ウソだったの」 何が?と問い返す隙も与えてくれずに、 山城さんは続ける。 …父と寝たことは、 一度も無かったのだと。 「当時の私は本当に絶望していたの。 だって父が浮気した挙句に家を出て、 そのせいで母がおかしくなって、 私を道連れに死のうとしたんだよ? 結局、死に切れなくて、 母は入院生活が続いたんだけどね。 ほんともう、地獄だった。 入院費は保険でなんとかなったけど、 生活費も食費も無くて。 学校も辞めなきゃダメかなあって。 そんなときにアナタのお父さんが現れた。 最初は警察に 悩み相談の電話しただけなんだ。 それで知り合って、わざわざ会いに来て。 でも私、心がヒネくれてたから、 『中途半端に関わってくんな!』って。 それで嫌がらせのつもりで、 アナタの家まで押しかけて、 お父さんの子を妊娠したと嘘を吐いた。 それがまさか、 あんな大ごとになるなんて…。 結局、離婚までしなかったけど、 アナタのお父さんは家族と別居して、 ボロボロの一軒家で、 私と2人だけで暮らし始めたの。 …だけど信じて。 お父さんは私に手を出してないよ。 アナタのお父さんはね、 本当に神様みたいな人だったの」
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