[芹香編] 第4章 西村side

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父の葬儀後、 山城さんの母親が無事に退院。 母親の実家がある岩手県へと引っ越し、 そこで第二の人生を歩み出したそうだ。 高校を卒業して美容師になり、 22歳で結婚したが5年で別れ。 35歳になった今、 再婚が決まったのだと。 「ずっと逃げてた気がするの。 暗い思い出に蓋をして見ないフリしてた。 でもね、ふと気付いたんだ。 アナタのお父さんが私と出会ったとき、 今の自分と同じ年齢だったんだなって。 やっぱりあの人は素晴らしかったなって。 あの頃の私が言っても、 アナタたちは信じなかっただろうけど、 現在の私が言ったら、 信じてくれるかもしれないでしょ? だから、来たの。 …ねえ、覚えておいて。 アナタのお父さんは、 最高の人間だったということを」 ああ、ちくしょう。 父さんが生きてるときに知りたかったな。 どうしてこんな、今になって知るんだ。 今度、墓参りに行こう。 墓前で手を合わせて謝ろう。 ずっとずっと最低の父親だと誤解してて、 ごめんなさいって。 頭を下げて謝ろう。 ああ、ちくしょう。 嬉しくて、涙が止まらない。
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