[芹香編] 第4章 西村side

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厳格な父、優しい母、頼りになる兄。 家族なんて缶詰みたいなもので、 キレイなラベルを貼っておけば、 誰も中身が腐っているなんて思わない。 …ウチの家族は、とっくに腐っていた。 警察官だった父は、とにかく真面目で、 だらしない姿なんか見たことが無かった。 子供心に、 『疲れないのかな』なんて思ったほどで。 毎朝1時間程度のジョギングをし、 夜は帰宅してすぐ悩みを抱えた人の元へ。 その相手はストーカーの被害者だったり、 虐待に遭った子供だったり、 学校でいじめに遭った女子高生だったり。 彼らは皆んな、父に感謝していた。 …その一方でどんどん壊れていく家族。 殆ど家にいない父親に対し、 余所余所しい息子達。 困った人たちにお金を渡すため、 生活は困窮し、そんな父に母は呆れ、 口も利かなくなっていく。 そんなとき決定的な事件が起きる。 家に女子高生が訪ねて来て、 父の子を妊娠したと騒ぐのだ。 当時、俺はまだ10歳で、 それでもなんとなく意味は分かった。 父が家族を裏切っていたということを。 開き直った父は、 母と俺たちにもう愛情は無いと言い切り、 まったく帰って来なくなる。
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