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……
「和哉?まだ何を拝んでるのよ~」
「あ、うん。もう少し」
数日後の土曜。
墓参りをした帰りに実家へ寄り、
こうして仏壇の前で手を合わせている。
もちろん、初めてのことではないけど、
気持ちを込めるのは初めてだ。
相変わらず金魚のフンみたいに、
華子がくっついてきて、
寒いと文句を言いながら、
背後霊の如く後ろで手を合わせている。
「2人とも早くこっち来なさいよ、
温かいお茶を煎れたから」
義父は急ぎの仕事とかで、
今日は夕方までいないらしい。
「あぢっ」
母の煎れたお茶は驚きの熱さで、
舌を火傷しそうになりつつ俺は訊ねた。
「なあ、母さん。
ここにも来たんだろう?山城さんが」
「来たわよ」
即答。
母は良くいえば裏表の無い人なのだが、
悪くいえば、考えナシにモノを言う人だ。
「俺、ずっと父さんのこと誤解してて。
山城さんのお陰でそれが解けたから、
本当に感謝してる。母さんもそうだろ?」
…すると母は不思議そうな顔をして、
こう答えた。
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