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「お母さんはね、いつでも許してきたの。
生活費を他人様にプレゼントしたり、
家族と一緒に過ごす時間を全部、
困ってる誰かに使っちゃうダメ男をね。
それを分かってくれてると思ってた。
私たちは家族という名の運命共同体で、
一緒に頑張ったつもりでいたのよ。
なのに、あの人どんどん悪い方に考えて。
自分だけ家族から疎まれてるとか思って。
女子高生の戯言なんか、
信じちゃいないわよ。
なのにあの人、言い訳してくれなくてさ、
すぐに私たちを諦めちゃった。
だから怒ったの。
『反省しろ!』と思って別居したのよ」
そう言いながら笑う母さんは、
少しだけ泣いているようにも見えた。
「でもあの人、死ぬ間際に言ったの。
もう意識も無くなって目も虚ろなのに、
最後の力を振り絞ってね。
>ありがとう
…って。
なんかそれでもう、全部許しちゃった。
たぶんずっと、
苦労かけたという負い目を持ってて、
それで一緒にいるのが苦しくなって、
別居して一瞬ラクになれたけど、
やっぱり離れて分かったんじゃない?
家族って有り難いんだなあって。
だから、いいの。
お母さんは全部許しちゃったから」
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