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えぐっえぐっと華子が隣で泣いている。
「和哉がずっと彼女を作らなかったのは、
きっと父さんの影響なんでしょ?
悪いお手本を見せちゃったわねぇ。
お前は本当に父さんソックリで、
何でもウジウジ悩み過ぎなのよ。
母さん、いい加減な気持ちで
言ってるんじゃないんだから。
華子ちゃんと付き合ってみなさい。
和哉には屈託のないコが似合うわ。
クヨクヨしたら、
それを笑い飛ばしてくれる。
立ち止まったら、
力任せに背中を押してくれる。
華子ちゃんみたいなコが、
アナタには必要なのよ」
素直に『うん』と言いたかったけど。
きっと言わなくても通じてると思い、
黙ったまま華子を見た。
饒舌な華子も、
この時ばかりは殊勝な顔をして、
そっと俺の手を握り、静かに微笑む。
…ねえ、父さん。
家族は缶詰みたいに冷たくなかったよ。
優しくて温かくて
ジンワリ心に染みるんだ。
ねえ、父さん。
俺も将来、そんな家族を作りたいな。
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