[芹香編] 第4章 西村side

5/23
前へ
/23ページ
次へ
少しだらしなくて、適当で。 いつでも屈託なく笑い、 家にたくさんの友人や仕事仲間を呼ぶ。 「ああ、もう!またこんなに散らかして」 「ごめんごめん。でも楽しかっただろ?」 母もたくさん笑うようになったのに。 やはり俺は、 本物の家族にはなれなかったようだ。 なぜなら、妹を好きになったから。 無邪気な顔をして、 手放しで愛情を向けてくる可愛い妹。 この均衡を保つには、 自分の気持ちを押し殺すしかない。 閉じ込めて蓋をして、 気付かないフリをして、 自分を騙しながら生きるしかないのだ。 それもそろそろ限界だと思い始めた頃、 兄が結婚を機に家を出たので、 俺もそれに便乗し、マンションを借りた。 義父は最後まで反対したが、 『彼女をつれ込めないから』と嘘を吐き、 それを強引に説き伏せ。 そうしてやっと、 心静かに暮らしていたのに。 ある日突然、 手荷物1つで妹がやって来て、 一緒に住みたいと言う。 「だってお父さん最近、週3で宴会だよ。 私、うるさくて勉強に集中出来ないもん。 このままじゃ私、赤点取っちゃう」 …同居なんか絶対無理だと思うのに。 不思議なことに、 一緒にいたいと渇望する自分もいて。 「お兄ちゃん、お願い。ね?ね??」 長い長い葛藤の末、 結局『いいよ』と承諾してしまうのだ。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

361人が本棚に入れています
本棚に追加