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「ただいまー!」
この声は母さん…って、もうこんな時間なのか
夏は日が暮れるのが遅いから感覚が狂うな
夏休みは特にそうだ
「あら、その子は…」
「いや、コイツは…!」
「家の前にいた黒い子が言ってた子ね。確かに可愛いわ」
「おじゃましてます…」
「いいのよ」
家の前にいた黒いの…まさか!
俺は椅子から立ち上がり、踵を踏んで靴を履き外に出た
門を出てすぐ、塀に寄りかかるようにして一人の少女が立っていた
髪型は黒のボブカット
白で刺繍のされた黒いゴスロリに小さな斜めがけカバン
手には畳んでいる黒い日傘を持っている
黒縁の四角い眼鏡をかけており、その奥には紅い瞳
見た目だけなら少し小柄だが俺と同い年くらいと言ったところか
少女は俺に気づくと柔らかく微笑んだ
その微笑みを見た途端背筋に寒気を感じた
「こんにちは、三影 龍介さん…いえ、時間としてはこんばんはの方がいいでしょうか?」
「…微妙な時間だ。どっちでもいいさ」
「あら、人間は挨拶を大切にする生き物だと思ったのですけど?」
「相手にもよる」
「おかしいですね…今の文化を知るために他の子から勧められた読んだ本では、アイサツをしないのはスゴイ・シツレイだって書いてましたよ?」
「それは偏った知識だ。覚えておくにしても、片隅に置く程度でいいだろう」
「そうですか…でも、挨拶は大切だと思いますよ?」
寒気が強くなる
どうやら挨拶をしないことが気に入らないようだ
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