第二話~その少女は

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「あら、お帰りなさい」 「あぁ、うん、ただい…」 リビングに戻ると、ツァトガがまた筒の中に手を突っ込んでいた 暫くすると、筒の先端から触手が出てきた それを直視しないように目を反らす 「あら、すごいじゃない!手品が上手なのね」 「手じなじゃないのに…」 母さんは冒涜的な触手を見ても何ともないようだ おそらく、何も知らないからだろう 彼女が旧支配者…邪神だということを 「ねぇ、いい人…?」 「それは俺のことか?」 「そう、いい人…」 「…俺は龍介だ」 「りゅーすけ…?」 「そう、龍介だ」 「りゅーすけ、おなかすいた…」 紅い瞳でジッとこちらを見つめる 気に入った相手をその瞳で魅了し、眷属とするらしいが… ツァトガは普段使う機会がなかったためか、コントロールが出来ていないようだ さっき謝っていたのを見る限り、多少は意識をしているのか ナイアにでも聞いて練習させた方がいいかもしれない 何を要求されるかわかったものじゃなく、そもそも居場所が分からないというのはあるが… その内気が向いたらまた出てくるだろう 「そういうな。俺は昼飯すら食ってないんだぞ?」 「あら、お金上げたじゃないの。空もそこにあるし」 「買った弁当はコイツに食われたんだよ。で、空は律儀に家まで持ってきたんだ」 「りゅーすけ、おこってる…?」 「…いや、今更だ」 それに、それどころじゃ無かったというのが本音だ まさか公園で会ったのが、無形、怠惰と言われる邪神、ツァトゥグアだとは思いもしないだろう …触る気ないのに祟られてるからな もっとも、本人にその気はないのだろう 「ツァトガちゃんがいるなら、もう一人分準備しないといけないわね」 「それは大丈夫だと思う」 ナイアから受け取った袋を開け、中身をテーブルの上に置いた 中には豪遊しない限り暫く遊んで過ごせるだけの札束が入っていた …それはあくまで人間基準であって、邪神がどうなのかはしらないが あとでツァトガについてもう少し調べておくとしよう
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