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「これたべていい…?」
「よくはないかな。これ食われちまうと俺の分がなくなってしまう」
「そう…」
「気は済んだか?俺はもう行くぞ」
掴まれた手を振り払おうと力を込めた
…だが、まるで万力にでも掴まれたかのように全く動かなかった
「おなかすいた…」
暑さによるものとは違う嫌な汗が背中を伝う
こいつにこれ以上関わってはいけない
再び少女は口を開く
「おなかすいた…」
「…これが欲しいのか?」
「うん、ほしい…」
「…そうか。なら、片手だけ離せ」
少女は言われたとおり、左手だけを放した
と、同時にもう一度振り払おうと試みる
…が、やはりダメだった
「うそ、ついたの…?」
「いや、そうじゃない。その放した手で俺が今持っているところを持ちな」
少女が左手でコンビニ袋を掴んだのを確認し、俺も右手を放す
「さ、これでいいだろ?」
少女は頷くと、残りの右手も放した
「あなたいい人…名まえは?」
「それはダメだ。それはやるがここまでだ」
「そう…」
「そういうわけだからさ…じゃあな!」
少女に背中を向け、手の茶を放り投げ家に向かって全力で走り出した
その直後に何か聞こえた気がしたが、多分気の所為だろう
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