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やかて未の刻(ひつじのこく=午後二時頃)になり、花街の本通りでは――
きらびやかで豪華けんらんな、花魁行列が始まった。
この行列は、花街かよいの色男は勿論、近くの町衆たちの楽しみでもあった。
そこへ、玄介たちも駆けつけた。
江戸が誇る五人の花魁が、しゃなりしゃなりと歩む。
その中で、ひときわ美しい三崎太夫(みさき たゆう)が近付いてきた。
「おーい、三崎太夫、ちょいとヤボ用でな。こっちへ来てくんな」
その頭に簪が足りないと判断した玄介は、三崎太夫の前に出ると、十手を着物の陰でそっと見せた。
三崎太夫は、ぎょっとしたが、
「ちょっと催しましたゆえ、川屋へ……」
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