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三崎太夫は、大人しく近くの番屋まで付いてきた。
番屋には玄介のように役目の者しか入れなかったので、大家たちは外から聞いていた。
玄介は粗茶を湯飲みに入れて、彼女の前に出してから、
「でな三崎太夫、御用のスジの玄介って者だが、簪が足りないみてえだ。どうしたんだい?」
彼女は、伏目がちに、
「いま、補修に出しておりますのえ……」
「おーおー、それって、これじゃないのかい?」
玄介は、例の簪を見せた。
「えっ、なんで……?」
「熊吉を殺したのは、あんただな? 気の毒だが、すっかりネタは上がってるんだよ」
「親分さん、恐れ入りました……」
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