どんぐり長屋で殺人――!

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花魁行列は中止になり、三崎太夫は番屋に連行された。 長屋の連中は、中に入れないので、外から見守ることにした。 その顔を見詰める玄介を前にして、三崎太夫は神妙に…… 「実は、熊吉とは同郷でございました。そのために熊吉は、私に付きまとっておりました。私は、本当に困っておりました。そのために今回のような事をしてしまったのです」 「なんで簪を持って行かなかったんだい? もし簪が残ってなかったら、多分、オイラにも分からなかっただろうな……」 「きょうは花魁行津の日だったので、早く帰って支度をする必要があったのです。行列が済み次第、そっと長屋にいって、回収するつもりでした……」 「なら、別の日に――とは考えなかったのかい?」 「私は、もう、いっ時も早く熊吉に消えてほしかった……。だから、今朝やってしまったのです……」 玄介は、溜め息をつき、 「そうだったのかい……。しかしな、やっぱり人を殺しちゃいけねぇんだよ」 「はい、申し訳ございません。親分さん、お手数をおかけしました……」 涙を流しながら、うなだれた。    
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