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それから数日後――
南町奉行所のお白州には、普通の地味な着物姿の三崎太夫が悄然と座っていた。
参考人席には、玄介と、どんぐり長屋の大家の姿もあった。
やがて奥から、担当奉行の出場を知らせる声が響きわたった。
三崎太夫は、崩れるように頭を下げた。
関係者や参考人一同も起立すると、頭を下げて奉行の登場を待つ。
現れたのは、高山奉行であった。
「一堂の者、面を上げよ」
関係者や参考人一堂は頭を上げた。が、三崎太夫は下げたままでいた。
高山奉行は、それを見て、少し間をおいてから、
「さて今回は、過日、通称どんぐり長屋においての、大工の熊吉殺害の件を吟味いたす」
傍に用意された罪状書を手にした。
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