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「そこに参っている三崎太夫とやら、その方が、大工の熊吉を簪で殺害した事は、相違ないか?」
「はい。相違ございません。誠に申し訳ございません……」
「が、しかし、その方が、そのような犯行にいたったのは、熊吉がその方と同郷であることを良いことに、無理やり夫婦になろうとしたため。また、言うことを聞かなければ、花魁行列を妨害すると脅したため。これらの事は、同じ花魁仲間からの証言もあり、明白である。さよう相違ないか?」
「はい……相違ございません……」
三崎太夫の声は、ふるえていた。
「奉行も男ゆえ、熊吉の気持ちも分かるな……。男とは、そういう者なのだ」
三崎太夫は、すすり泣いていた。
「それでは、三崎太夫に処罰を言い渡す」
一堂の者は息を呑んだ。
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