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玄介が熊吉の住まいに駆け付けると、長屋の住人がガヤガヤと集まっていて、なぜか玄関の戸が二枚とも、はずれていた。
それを見て玄介は、
「これは? どうして二枚ともはずれてるんでよ!」
そこへ大家が追い付いた。
すると野次馬の中から、二十歳代の希美(きみ)が、おずおずと出てきて、
「実は、さっき、熊吉っつぁん、また朝食も取らずに、仕事に行こうとしてるんだ……と思って、おにぎりを持ってきたんです。そしたら戸が開かないし、詠んでも出てこなかったんで、まだ寝てるのかなぁ……と思って、戸のやぶれ穴から覗いたんです。そししたたら奥で倒れてるのが見えたんで、思わず叫んじゃって……」
玄介が奥を見ると、確かに熊吉らしい男が倒れている。
「確かに、これだけ物音がしてるのに起きないのは変だが……。で、お希美さんが、この戸を?」
すると希美は、首を大きく横に振った。
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