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玄介と長屋の連中は、長屋をぐるっと回って、熊吉の家の裏にやってきた。
――が、どこをどう探しても、凶器らしい物は落ちてなかった。
「あそこに、こんな物が落ちてたぜ」
虎五郎が差し出したのは、小さなアーチ型の木製品だった。
玄介は、まじまじと身ながら、
「なんでぃ、これは……?」
すると大家が、
「これは楽器の琴に使う琴柱(ことじ)だよ……。この長屋にゃぁ不必要な物……なんで、こんな物が……?」
「そんな……琴を使うヤツなんて、浜田屋の花魁(おいらん)くらいだろうな……」
するとマヤが、
「花魁といえば、私が今朝、井戸の水をくみに行った時、見覚えのない女が、走って行くのを見ましたよ」
玄介は思案しながら、
「ってことは、その女が犯人か……。だけど、肝心の凶器が出なきゃぁな……」
さらに希美が、白いヒモのような物を見せ、
「これって凧糸ですよね……? だけど、こんな所で凧あげなんて……」
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