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それを見てマヤは、
「そりぁそうだけど、凧糸なんて、特にめずらしくないよ」
すると玄介が、
「凧糸の長さが……中途半端だなぁ……」
それを見ながら、大家が、
「凶器になるとすれば、細長くって、先の尖った物なんだろう?」
熱心に周りを見ながら、虎五郎が、
「そんな物、どこにも落ちてないじゃないか……」
同様に周りを見ながらマヤが、
「ひょっとしたら、凶器は犯人が持ち去ったんじゃぁないのかね……?」
さらに思案しながら玄介が、
「なぁお希美さん、あんただったらどうだい。憎い男を殺した凶器、持って行くと思うかい?」
「あたしだったら、イヤですね。もし見つからない自信があれば、そのへんに捨てますよ」
「そうだろうな……。なんと言っても、憎い男を刺したんだからな……」
「あたしだって、イヤだけどねぇ……。捕まるのもイヤだよ!」
マヤは、きっぱり言った。
その時、突風が吹いて、ほとんどの竹が、ざわざわと揺れ動いた。
いわゆる、江戸のからっ風――だった。
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