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そうこうしているうちに、綺麗に髪が巻き終わり、
「ゆっくりしてきて良いからね。夕飯も食べてきなさい」
母はそう言いながら、まるで人の恋話にはしゃぐ女子高生の様なテンションで部屋から出ていった。
(夕飯も、誘ってもらえなかったら行かないけど。自分から誘うなんて出来ないな)
自分に自信がないから、断られるのが怖い。
「って、今から不安になってたら、ますます緊張しちゃう。ダメダメ」
裾にレースの付いた、丸襟のピンクのワンピース。
買ってはみたものの、あまりに乙女過ぎて着る勇気が無かった。
まさしく衝動買いそのものだ。
(こんな時にしか、着る機会無い気がする。)
髪もゆるく巻かれて、今こそこれを着る時だ。
よし。と袖を通し、鏡の前に立つ。
私の歌を褒めてくれた人。
私に笑顔で話しかけてくれる人。
大切な時間を割いて、私に会いに来てくれる人。
倉田将平くんは、年下だけど、包み込むような優しい笑顔で、私と真逆の明るい人。
(少しでも、仲良くなれると良いな)
そう願いながら、待ち合わせの駅に向かった。
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