春のある朝

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4月も終わる頃、少し外も暖かく過ごしやすくなってきた。 バイトも休みだけど、特に予定はない。 先月 二十歳になった俺は、昨日の仕事終わりにバイト仲間と飲みに連れていかれたのだが、バイク通勤の為全く飲まず、酔い潰れた友人達を介抱するだけの疲れる飲み会だった。 同じくバイト休みの友人に声掛けようかとも思ったが 「上田も結構飲んでたし、昼までねてんだろーなぁ。」 そう思い、スマホを上着のポケットに突っ込んで、部屋着のまま家を出た。 実家を出て5分ほど歩いたところに神社がある。 ずっとここに住んでるものの、子供の頃お祭りに行く程度で、もう10年程は行ったことがない。 ただ、何となく行く宛もないので、行ってみただけだった。 神社の境内には、小さな公園がある。 だんじり祭の準備の時には、よく集まった子供同士で遊んだ場所だった。 そして そこに彼女は居た。 静かな公園で、ブランコに1人座り、 優しい綺麗な声で、歌を歌っていた。 柔らかな長い黒髪が、朝の光に照らされてキラキラしていて、とても幻想的に見えた。 「歌、上手だね」 思わず声をかけてしまった為、自分でも恥ずかしくなり、笑って誤魔化した。 彼女は少しびっくりした様子でこちらを向き、恥ずかしそうに俯いてしまった。
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