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「まぁいい。お前を呼んだのは不毛な会話で時間を潰す為じゃない」
部屋の空気が変わった。
忍は真っ直ぐに佐野を見、構え、次の言葉を待った。
佐野は周囲を憚るかのような小声で話す。
「お前、引き抜きの話、全て断ってるらいしいな」
忍の表情が動いた。
「佐野先生には関係のないお話かと思われますが?」
静かなトーンの穏やかな口調ではあったが、不快の感情が見て取れた。
ふむ、と佐野は腕を組む。
「確かに、俺はお前の上司ではないな。
けどな、循内の原先生から多少の相談は受けている」
ああ、と忍は内心で呟く。
どうして、皆自分を放っておいてくれない――?
「いいか緒方」
佐野が静かに言い含めるかのように話し出した。
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