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「お母さん、ピアノだけは頑張ってみたいの」
祖父の大介や育ての父である義父の和也、そして二人の兄、篤と誠が応援してくれ、美羽の音大を目指せる事になったのだが。
そうだ、高校生の頃からだった、と美羽はピアノの譜面台に肘を突き、頬杖を突いた。
学校の進路相談、三者面談、等の諸々に奈緒は来なくなった。
代わりに祖父や父がちゃんと来てはくれたのだが、奈緒の態度は次第に目に見える嫌がらせとなっていったのだ。
お弁当が必要な体育祭。蓋を開けたら中に生米が入っていた事があった。
家に帰った美羽に、奈緒は冷たく言い放った。
「美羽は身体が弱いんだもの。
体育祭なんて何も出来ないでしょう。
何も出来ない人は何も食べなくていいの」
何も言い返せず、誰にも話せず、美羽は切りつけられたような胸の痛みを抱え、堪えた。
きっといつか母も分かってくれる。
今は進学の事で怒っているだけだ、と自分に言い聞かせてきたのだ。
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