遠い記憶

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「忍、私のこの心臓はね、一人の素晴らしいお医者様が守ってくれたのよ」 「おいしゃさん?」 「そうよ。私の身体に傷をつける事なく、救ってくれたの」  彼女の、胸に当てられていた手が幼い忍の頭に移り、優しく撫でた。 その穏やかな笑みに身も心も解される。 爽やかな緑の風が二人を包んでいた。  忍は彼女に抱きつき、言った。 「ぼくもおいしゃさんになって、さっちゃんをげんきにする!」  柔らかな腕が忍を優しく抱き締めた。 「なって。忍も立派なお医者様に……」  澄んだ美しい声が、忍の耳にいつまでも残っていた。  彼女は……美羽の母――紗羽。  
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