胸騒ぎ

13/24
前へ
/35ページ
次へ
「誰かが来ても出なくていいからな! ああ、インターフォンにもでなくていいぞ!」 「私は子供じゃないから。大丈夫だってば」  その後も代わる代わる通話口に出、なんだかんだと心配する祖父と父。 美羽は何とか安心させようと極力明るく振る舞い、電話を切った。  受話器を置いた美羽が、ふう、と一息ついた時だった。 再び着信音が鳴った。 また父か祖父が掛けてきたのかと思った美羽だったが。 「美羽!」  美しくも硬く棘のある声音に美羽はビクンと背筋を伸ばした。 「お母さん?」  美羽を凍りつかせるには十分すぎる冷たい声。 その声はいつも、私は何かしただろうか、何を言われるのだろう、と彼女を身構えさせる。 「お父さん達は?」  家の様子を聞く当たり障りのない言葉に、心を安堵に弛ませた美羽は答えた。 「あのね、今さっきおじいちゃんが電話をくれて、おじいちゃんもお父さんも今夜は帰れないって……お母さんも……?」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加