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奈緒は、そうよ、と言うと、フフと笑った。
美羽の身体がゾワリと総毛だつ。
たった今感じた安堵が、不吉な予感に変わった。
「美羽ちゃん」
‘ちゃん’。奈緒がそう呼ぶ時は、その後必ずよくない事が待っている。
それは、次の言葉で現実となった。
「外に出したままになってる私の大事な鉢植え、全部庭のハウスの中に移しておいてね」
耳を疑う言葉に美羽は息を呑み、真っ暗闇になってしまった外を見た。
大粒の雨が激しい風に煽られて窓ガラスに打ちつけられていた。
バラバラバチバチ、そんな凄まじい音が恐怖を煽る。
「お……お母さん……」
サッシがガタガタと揺れ、雨に濡れる真っ暗な窓を見ていた美羽は言葉を失った。
奈緒のとって花は、商売道具である。
彼女は、大事な花は夕方、外出する日ならその前に、必ず庭に設えられた温室にしまっている。
今日も出かける前に何度も確認してたのを美羽は知っていた。
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