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「緒方、お前帰るところだったんだろ。
後は俺が引き継ぐ。
そのクランケは元は俺が診ていたんだ、だいたい分かっている。
動脈硬化がかなり進行していたクランケだった。
ТIAは恐らく急激な血圧の低下が原因だろ」
忍カルテを覗き込む佐倉に忍は、そうだな、と答えながら思案する。
本来ならば経過観察の為、帰れないところだが、今は、家の事で胸騒ぎがしてならなかった。
佐倉は信頼できる医師だ。
「悪いな……明日は早めに来る。
今夜だけ頼みたい。
何かあったら直ぐに連絡をくれ」
佐倉は、任せとけと、笑い、斉藤の肩を抱いた。
「斉藤君、腕の見せ所だ!」
いきなり佐倉に肩を組まれた斉藤は困惑混じりの笑いをその顔に貼り付け、
「はい! 任せてください!」
とピンと指先を伸ばした右手を額に当て敬礼のポーズをした。
苦笑を浮かべた忍は、その凸凹コンビに一抹の不安を覚えながらも、じゃぁ頼む、とナースステーションを後にした。
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