胸騒ぎ

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 想像以上の強風の中、美羽は飛ばされないよう一歩一歩踏みしめ、庭を歩いていた。 目を開けているのも容易ではない、叩き付けるような雨が行く手を塞ぐ。 顔を手で拭いながら庭の中央へ歩を進めていった。  200坪はある広い庭の中央部分は、レンガを敷き詰め、木製の大きなベンチを置いたイングリッシュガーデン風の造りになっていた。 ベンチが強風でガタガタと揺れ、その脇に立つ外灯がしなっていた。  消えたり点いたりする外灯の明かりと懐中電灯の光を頼りに、美羽はレンガ敷きの地面に並ぶプランターを見つけた。  もう花が終わった球根だけのもの。 来年また咲かせる為に葉だけになったもの。 枯れたような葉が蔓となって支柱にからまるもの……。  数えると15個。 ここにあるのはどれも温室に入れた事のない花達である事は、美羽は一目で分かった。
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