胸騒ぎ

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 母は何故こんな事をさせるのだろう。  美羽の心を暗いものが覆い始める。 ふるふるっと頭を振った彼女は、悪く考えるのはやめようと、胸に迫る黒い疑念を必死に振り払った。  年に何度もない嵐。 母はこの植物たちが心配になっただけだろう、と美羽は自分に言い聞かせ、自身を納得させた。 「とにかく早く終わらせなきゃ!」  懐中電灯を下に置いた美羽は、手前のプランターに手を掛けた。 *  着替えを済ませ病院関係者だけが通る廊下を早足で歩いていた忍は、手にしていたバッグから携帯を出した。 通話可能エリアまで来ると一旦足を止め、家に電話を掛けた。  呼び出し音が虚しく鳴り続けるのみで、一向に誰もでる様子がない。 そのうち、音声ガイドが付近に誰もいない事を告げ、電話は切れた。
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