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激しい雨と風の音の中で聞いた母と祖父のやり取りは、忍の脳裏から消える事は無かった。
何故、あの時母はあれほどまでに姉の紗羽が子を産む事を反対したのか。
結婚もしておらず、相手の言えぬ子を産む事に反対したから?
身体の弱かった姉を思って――?
いや、それだけじゃない。そこに何か別の思惑が見え隠れしていた。
あの日の事を今だに忘れられないのは、母と祖父のやり取りから感じた違和感のせいだけじゃない。
きっと、何かのショックを受けせいだ、と忍は思う。
子供心に、紗羽が誰かのものなのだ、と悟ったのだろう――。
ナースステーションに並ぶ医師専用の数台のパソコンは廊下に面した窓の前に置かれていた。
そこからは病室が並ぶ廊下が見える。
面会可能時間となっている夕暮れ時だが、今日は見舞い客が少ない。
いつもなら家族と談笑する患者の姿が見られるデイルームも閑散としていた。
それは、天気によるものと思われた。
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