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言われなくても、と肩を竦めた忍が看護師に聞く。
「聞かなくともだいたい想像はつくが……どうした」
看護師は苦笑いを浮かべ、言った。
「730号室の佐々岡さんが突然酸欠のような症状で苦しみだして……斉藤先生がテンパってます。それで――」
ああやっぱり、と思いながら手で額を押さえた忍は、冷静に看護師の話しの続きを聞いた。
「砂川さんが恐らくTIA(一過性脳虚血発作)だろうから、緒方先生を呼んで、って」
砂川、とはベテランの腕利き看護師だ。
黙って聞いていた佐倉が軽く吹いたようだった。
椅子を回転させ、言う。
「あーあ、看護師に先に病名診断されちゃって。斉藤君は張り切って空回るタチだからなぁ」
「そこがアイツのいいとこなんだよ」
そう言いながら忍は看護師に点滴の指示を出す。
「とりあえず、生食500……そうだな、アスピリン、シロスタゾールを持ってきてくれ。
どちらを使うかは診て判断する」
忍は聴診器を首に掛けながらナースステーションを出て行った。
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