胸騒ぎ

6/24
前へ
/35ページ
次へ
 言われなくても、と肩を竦めた忍が看護師に聞く。 「聞かなくともだいたい想像はつくが……どうした」  看護師は苦笑いを浮かべ、言った。 「730号室の佐々岡さんが突然酸欠のような症状で苦しみだして……斉藤先生がテンパってます。それで――」  ああやっぱり、と思いながら手で額を押さえた忍は、冷静に看護師の話しの続きを聞いた。 「砂川さんが恐らくTIA(一過性脳虚血発作)だろうから、緒方先生を呼んで、って」  砂川、とはベテランの腕利き看護師だ。 黙って聞いていた佐倉が軽く吹いたようだった。 椅子を回転させ、言う。 「あーあ、看護師に先に病名診断されちゃって。斉藤君は張り切って空回るタチだからなぁ」 「そこがアイツのいいとこなんだよ」  そう言いながら忍は看護師に点滴の指示を出す。 「とりあえず、生食500……そうだな、アスピリン、シロスタゾールを持ってきてくれ。 どちらを使うかは診て判断する」  忍は聴診器を首に掛けながらナースステーションを出て行った。  
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加