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何の為に #2
美羽の事だから、きっとバカみたいに素直にやってるだろう。
そんな事を考え始めると、もう会話の内容など頭に入らなくなってしまった。
自分でした事なのに、と苛立ちを覚えながら奈緒は手にしていたグラスをテーブルに置き、立ち上がった。
「先生? どうされました?」
生徒の一人が聞く。
「ごめんなさい、ちょっと家に電話してくるだけよ。
みんな私に構わず飲んで盛り上がっててね」
そう言い微笑み、奈緒は部屋を出た。
廊下に出た奈緒は、エレベーターで一階まで下りた。
フロントの前を通り抜けるとソファーが置かれているロビーになっている。
一面ガラス張りに控えめなシャンデリア。落ち着いた雰囲気のロビーの一角に置かれた一人掛けのソファーに腰を下ろした奈緒は携帯を取り出した。
死なれたら困るから。それだけよ、と自分に言い聞かせ、携帯を手にした奈緒だったが、あんな事を美羽に言った手前、家に直接電話をするのは気が引けた。
彼女は別サイドから家の状況を確認しよう、と考えた。
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