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そう言った声の主に引き戻された。
美羽の躰全体に感じるのは、裸の胸……躯。
それは、まぎれも無く……。
「今起き上がったら、どうなる?」
ククッとちょっぴり意地悪く笑う……そう、兄の躯――。
呼吸をするのも躊躇われる。
瞬きも忘れる。
胸の前で握り締めた拳を合わせ、目一杯身体を縮こませ固まる、そんな美羽を忍は胸に抱いたまま動かなかった。
なにがどうなって、こんな――と、美羽の心臓がバクバクと波打っていた。
息が止まりそうだった。
必死に記憶を辿る美羽の脳裏で、庭で雨に濡れて凍え……といった、途切れた糸の先が想像される。
密着する肌からダイレクトに伝わる体温。
お兄さんはもしかして――と身じろぎも出来ない美羽が必死に考えをめぐらせていると。
「かなり原始的な方法だったけどな……」
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