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‘今はない’は‘ずっとない’と同義語だ、と大河は心に刻んだ。
‘あんな事’をした自分が、今さらヌケヌケと美羽に連絡なんて出来る訳がない。
暫し苦悶の表情を浮かべていた大河だったが、パッと目を開けると回転椅子を半回転させ、大きな窓ガラスの方を向いた。
ガラス張りの近代的なオフィスが大河の部屋から一望できた。
社員の平均年齢が20代半ばの若い会社。
この業界ではまだ中堅といったところだった。
最近、株式二部上場する事が決まった。
大河は考えていた事を振り切るようにフルッと頭を振った。
立ち上がると部屋のドアを開け、オフィスに向かって声を掛けた。
「企画会議はじめるぞ!」
オフィスの真ん中に置かれた大きなテーブルを囲み、頭を寄せ合っていた社員の中の一人が顔を上げ、ニッと笑った。
「ちょうど良かった、今いいのが出てきたところだ」
そう話し、近くにやって来た大河に自分のノートパソコンの画面を見せた彼は、一緒にこの会社を立ち上げた仲間の一人。
大河は画面を見ながらオフィスにいる20人程の社員の顔を見まわした。
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