美羽の才能

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 月曜の午後の講義は微睡との戦い。 だが、居眠りなどしてはいられない講義もある。  教室程度の広さの講義室では、35、6人程度のクラス講義が行われている。 その内容は主に、ソルフェージュや和声といった音楽の専門分野。 今は、五線譜が書かれた黒板前に置かれたグランドピアノを弾きながら若い男性講師が、和声という、音の構成、旋律和声の仕組みを基礎から学ぶ講義を行っていた。 良く通る耳に心地よい声の紳士的な容姿の30そこそこといった風の彼に、女子学生達は真剣な眼差しを向けていた。  М音大のピアノ科は一学年300人程が在籍しているが、便宜上、科、専攻ごとに、学籍順30人前後くらいで区切られたクラスが構成されている。 専門の講義はそのクラスごとに受けるように組まれていた。 「この和声の特色、聴き覚えありますね」  そう話しながらピアノの前に立ったまま、講師の黛陸也(まゆずみりくや)はポロンポロンと綺麗な和音を流れるように弾いた。
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