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美羽が、篤か誠とならどうにかなったとしても奈緒は別に構わないと思っていた。
しかし、幼い頃から当たり前のように傍におり、本当の兄妹として育った彼らの間には揺るぎない家族としての絆が育まれていた。
彼らの関係は、それ以上にもそれ以下にもなり得る事は決してない。
特別な感情など生まれる筈もないのだ。
それに反し、年が離れていた事もあり接点が無く、互いを見る事も関わる事も滅多に無かった忍と美羽。
一見すると深くかかわる事のない、平行線を辿る関係。
しかし、その希薄な関係は裏を返せば紙一重、表裏一体の危うい均衡を保った関係なのだ。
ただでさえ、美羽はあの紗羽の娘なのだ。
そこに何かが生まれても不思議はない。
何か。そう考えた時、奈緒は背筋に冷たいものを感じた。
忍だけは絶対に駄目!
奥歯を噛みしめた奈緒の手元に不意に力が入り……バチンという音と共にバラの花が落ちた。
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