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「ねぇ、大河君、今誰か決まった人とかいるの?」
不意を突く奈緒の問いかけだったが大河は即答する。
「特定のはいない」
短い言葉だったがその一言から様々な事が窺い知れた。
大河は飾らぬ気さくな男で、容姿もスマートであか抜けており好青年だ。
相手には事欠かないのだろう。
奈緒はフフと笑う。
「美羽を貰ってくれる?」
キーボードを叩く音が初めて止まった。
僅かの間を置いて、大河が息を吐く気配がした。
「奈緒おばさん、それはムシが良すぎるんじゃないか?」
声の調子が変わった。
微かに、呆れた感が伝わってくる。
「俺、高校に入ってすぐの頃、美羽をくれ、って言ったよな。何回か。
……まあ、あん時はまだガキだったのもあるけどさ……おばさんまったく相手にしてくれなかったよな」
奈緒は、そうねあの時は子供だったもの、と答えたが……。
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