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「ガキだった、だけじゃないね。
おばさん、あん時俺に言ったじゃん。
‘本家といさかい起こすような家の子に美羽はやれない’って。
あれは、かなり破壊力のある言葉だったね。
いたいけな高校生だった俺は撃沈させられた」
大河の言葉には自嘲気味な響きが混じり始めていた。
「そんで……うんといい家にでも嫁にやろうと思っていたのに美羽は病気してどこにもやれなくなった。
しょうがないから、俺に、ってか」
奈緒は黙っていた。
やはり、この子は馬鹿じゃない――電話の向こうに気付かれないようため息をついていた。
暫し続いていた沈黙を大河が破る。
「俺は、今でも美羽が好きだよ」
それは、重く響く声だった。
奈緒はハッと携帯を持ち直した。
大河は、でも、と続ける。
「ちょっと事情があって今は俺からは美羽に連絡は出来ない」
「事情?」
聞き返した奈緒に大河は
「今は言えない」
とだけ答えた。
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