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「とりあえず、美羽が少しでも俺に会ってくれる気になったらそん時また考える。
今はないな」
そんな言葉を残し、大河は電話を切った。
奈緒は切れた携帯を持ったまま、少しの間考えていた。
事情って何かしら――でも、脈はあるわね。
そんな事を思いながら、彼女は微かにほくそ笑んだ。
忍と美羽の間には、何かしらの感情が生まれそうな気配がある。
奈緒の見た感じでは、そんなところだった。
芽は、早いうちに摘むに限る――。
*
電話を切った大河はコードレスフォンを机上に乱暴に投げつけた。
バカにしやがって、とため息をついた彼は椅子の背もたれに深く身をもたせかけ、目を閉じた。
俺があの時どんな想いで美羽を傷つけたか――こんな事になると分かっていたら、あの時ちゃんと、揺るがない決意と覚悟を持って美羽に接したのに!
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