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絡み合う思惑 #2
翌日、奈緒が急いで家に戻って来た時にはもう忍はおらず、美羽は一人で家族の帰りを待っていた。
あの嵐の中、忍と美羽は、どう過ごしたのだろう。
そんな事を考え始めると、とても心穏やかではいられなかった。
美羽の一挙手一投足からは何も窺えず、それはかえって奈緒の不安を煽った。
普通の兄妹であれば何の憂慮も無い事なのに――そう、普通の兄妹であるならば。
奈緒は、一週間ほど前、都内であった会合から戻った時に目にした出来事を思い出していた。
それは、日が沈み、辺りが薄闇に包まれる時間帯だった。
屋敷内のカーポートに、忍の愛車であるスポーツカーが停まっていた。
車通勤の彼が、帰って来ているという事が分かり、その隣に車を停めた奈緒は降りると直ぐに母屋に目をやった。
もう辺りは薄暗く、家の中であれば真っ暗であろうと思われたが、母屋はどの部屋も電気が点いている様子はなかった。
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