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秘め事 #2
「ちょっと腫れて熱持ってるわね。
きっと軽い捻挫をしてると思うの。
なるべく早く整形に行ってみてもらった方がいいわ。
中学最後の県大会を控えてるんだもの、早めに対処しておかないと」
そう言いながら柔らかな笑みをみせた香織の顔を、忍は窺うように見つめていた。
彼の深い漆黒の瞳が放つ光はまるで、心の深淵、自分の芯、まで見透かすようだった。
一瞬ドキリとした香織は手をとめ、その目から逃れるように視線を手元に移した。
テープを巻き終えた彼女が
「はい、おしまい。今日はもう練習は……」
そう言いかけた時。
「先生はいつもそんなに笑ってなくちゃいけないんですか?」
唐突な問い掛けに、え? と香織は忍の顔を見た。彼の目は真っ直ぐに香織を見据えている。
「どうしてそんなこと聞くの?」
香織は震えそうな声で逆に聞いた。
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