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不妊治療を専門としてきた綾子は、自然の摂理の不条理のような抗う事のできない矛盾に歯噛みする。
「どうして神様は……我が子を待ちわびて苦しんでいる人に授けてくれないのかしら」
「まったくその通りですね……」
重い言葉に、賢吾は言葉が見つからなかった。
綾子の顔がいつもより曇って見えたのはそのせいか、と深くため息をついた。
「綾子先生は……」
静かに切り出した賢吾の言葉に綾子は、え、と耳を傾けた。
「結婚とかは……考えていないんですか」
あまりにも唐突な単刀直入な問いに、綾子は目を丸くして賢吾を見た。
「どうしてそんな事……聞くの?」
賢吾はタバコを灰皿に押し付け煙を吐き出すと、綾子を真っ直ぐに見た。
「綾子先生は自分の事はちゃんと考えているのか、心配になっただけですよ」
「私自身のこと?」
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