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「この事は絶対に母さんだけには知られるな」
「お母さんにだけは……? 絶対……?」
忍は、美羽を抱く腕を緩めた。
「ああ、母さんにだけは、絶対」
そう強く言った忍は、見上げる美羽の唇に自分のそれを重ねた――。
一人だけになった広い部屋に取り残された美羽は、時計の音しか聞こえない静寂の中、何かが軋む微かな音と何処かがぱらぱらと崩れるような、そんな小さな音を聞いた気がした。
この家の空気が、変わろうとしている、そんな気配を。
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