それぞれが抱える想い #2

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それぞれが抱える想い #2

 表現出来る、という事はその時自分の胸に抱える感情、情緒、想い、皆、音に託せる、という事。 美羽は、初めてそう思えた。  五線譜は白いキャンバス。 音は、自分を反映してくれる筆と絵の具。美羽の鉛筆が止まる事なく走り続けた。 頭の中でわんわんと鳴る音を書き留める。 鉛筆が追いつかない程美羽の中に音が溢れ流れていた。 美羽は初めて、楽しいかも……と呟いていた。  無心に音を書き込んでいた美羽は、階下のリビングから聞こえた、ボーン、という一時を知らせる時計の音に、ハッと顔を上げた。 部屋の時計の秒針の音が妙に大きく聞こえ始めた。 新月の夜の闇は、外の音を呑み込んでいるように思えた。  鉛筆を置き、軽く伸びをした美羽は、黛が最後に言った言葉を思い起こした。 「君が、新しい一歩を踏み出す事は、君を見守る人の未来も変えてあげられるかもしれないよ」  美羽は、少し考える。‘見守る人’は、誰か。  ふわりと浮かぶ、愛しい人。  机上にあった携帯を握った美羽は、勇気を出してボタンを押した。 まだ帰らぬ彼の声を、今どうしても聞きたかった。 *
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