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「何か、いい事あった?」
美羽の胸がドキンッと鳴った。
「ど、どうしてっ?」
心が読まれるような値が血圧や血液検査、心電図から分かるというのか。
美羽の声は裏返り、一気に顔が火照るのを感じた。
「分かりやすい」
頬を染めた美羽を見て、看護師がクスクス笑い、小声で囁いた。
「彼氏ができたとか?」
‘彼’
その言葉には、少し疑問符が浮かんだ。
美羽は小さく首を傾げた。
‘彼氏’というには、まだ今一つ、何か違う気がした。
「好きな人が……できたんです……」
そうとしか言えなかった。
相手の事は公にできる関係ではない。
美羽の胸がきゅ……と締まった。
なにより、兄の心の底、深淵が完全に見えた訳ではないのだから。
思い直してみれば‘兄の心’など、自分には分不相応に思えてならなかった。
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