約束のチケット #2

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「なんにしても、恋をすることはいいことね」  表情を曇らせてしまった美羽に、看護師は、何かを汲み取ってきれたのか、さり気なく話しの矛先を変えた。 彼女は血液検査の結果が書かれた紙を美羽に、はい、と渡しながら微笑んだ。 「人を好きになる気持ちって、医科学では説明できない不思議な力をくれる気がするわね」  月に2回の採血検査の結果を美羽は見、わぁ……、と嘆息を漏らした。 いつもH(high)やL(low)の警告数値で真っ赤になっている検査結果表が、前回に比べ、明らかに改善している。 生活、食生活を変えた訳ではないのに、と美羽は看護師の言葉に妙に納得してしまった。 「じゃ、針抜いて止血するから、じっとしててね」 「はい」  目を閉じた美羽の脳裏に、甘い声が蘇る。 ――美羽……連れていきたいところがあるんだ。行くか?
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