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思わず、横たえていた身体をお越し掛けた美羽は、止血作業をしていた看護師に、こらっ、と怒られ、すみません、と再び横になった。
「血、止まり掛けてたのに、出てきちゃったから、もう一度止血し直しね」
「はい」
「美羽ちゃんは悪くない、悪いのは小嶋さん」
今、兄がお迎えに来た、という情報を持ってきた看護師を、血が滲んで真っ赤になってしまった止血テープを剥がす看護師が軽く諌めた。
「はーい、ごめんね、美羽ちゃん」
「そんな、いいんですって」
「小嶋さんは、ミーハーなの」
そんなやり取りをしながらも、看護師二人は忍の話をし始めた。
忍は、どこに現れても話題をさらう。
美羽の胸がどきどきと躍り出していた。
兄は、なぜ突然迎えに?
そんな疑問は、圧倒的に大きい嬉しさに消される。
早く会いたい、と気持ちが急いた。
美羽の腕に止血バンドが巻かれ、看護師が言った。
「素敵なお兄さんと早く帰りたい気持ちは分かるけど、ちゃんと血が止まるまで休んでからじゃないとダメよ」
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