約束のチケット #2

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 冗談めかして言った看護師に、美羽は、え、と顔を赤らめてしまった。 美羽の事情を知らない看護師達は笑った。 「あんなお兄さんじゃ、ブラザーコンプレックスになるかもしれないわね」 「確かにー。すごい目の保養だわ」 「じゃあ美羽ちゃん、もう少し休んでてね」  看護師二人が忙しそうに次の患者の元へと行ってしまうと、美羽は、胸に手を当て、目を閉じた。  ブラザーコンプレックスじゃない。 美羽は、自らの胸中にそう言い聞かせる。 ――彼は、私の恋人。  美羽を助手席に乗せた車は、夜の街に向けて走り出した。 ハンドルを握り前を向く、鼻筋の通った忍の顔をちらりと見上げ、美羽はどきどきとと高鳴る胸を必死に抑え、聞いた。 「今日はどうして?」  忍が美羽の透析の迎えに来るのなど、2年ぶりくらいのことだった。 秘密の関係を兄との間に共有するようになった今でも、透析の迎えなど期待した事も無かった美羽にとって今夜の出来事は、驚きも嬉しさも通り越した、戸惑いにも似た感情を持て余す結果となっていた。 想定外の出来事による驚愕は、感謝の意を伝える言葉を吹き飛ばしてしまった。
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