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謝らなければいけないのは自分なのに。
罵ってくれたら忘れられたかもしれないのに。
「女々しいと思われるかもしれないけど……あの時、美羽が俺を責めてくれたら俺は救われたのかもしれない、なんてずっと思っていた」
「好きだったから」
美羽の、意外な返しに大河は、え、と目を丸くした。
美羽が、少し悲しげな顔で言葉を継いだ。
「私、大河の事が本気で好きだったから。
だから、大河をそんな気持ちにさせてしまった事の方が、悲しかったの。
大河に申し訳ない気持ちの方が、あの時は大きかった。
だからあんな事言ったの」
「美羽……」
美羽の言葉には、嘘はなかった。小学校の時から、ずっと傍にいてずっと守ってくれていた大事な幼馴染は、いつしか恋の対象となった。
本気で、好きになった。
彼も、自分を想ってくれていた事を知っていたから、自分の病気のせいで、彼をがっかりさせてしまった悲しみの方が、その時は大きかった。
美羽は、瞬きも出来ずに自分を凝視する大河に、肩を竦めてクスリと笑いかけた。
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