茶柱

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 西武線の特急列車レッドアロー号に揺られる美羽は、街明かり眩しい都内を抜けて埼玉に入り、一気に暗くなった車窓を見つめていた。  大河は美羽を池袋駅まで送り、特急券を買ってくれ、降りた駅からタクシーで帰れよ、とタクシー代まで渡してくれた。 悪いから、と遠慮する美羽に大河は、俺はそこそこ稼いでるんだぜ、とカラリと笑った。 大河は、美羽の知らないうちに大きな成長を遂げていた。 そんな彼は別れ際美羽に言った。 「友達として、もう一度やりなおそう。 友達なら、ずっとこの大事な関係を保てるだろ?」  微かに家々の明かりが映り込む車窓を見つめ、美羽は「そうだよね」と小さく呟いていた。 その呟きには、大河とのこの関係、均衡を保っていきたい、という想いが込められていた。  暗闇にポツリポツリと浮かぶ明かりと、時折列車が追い抜く車のライト。 街が動く、人が生きてる。 時間が、流れる。 辛かった出来事も、過ぎ去る時流に乗せて、過去のものにして、前に進まなければ、人は生きていけない。
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