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奈緒の金切声に言葉を遮られ、美羽はビクンッと震えた。
奈緒の目に、憎悪にも似た光が宿って見えた。
「忍があなたの事なんか本気で相手にするわけがないでしょう!」
全身鳥肌が立つ程の恐怖に似た感情が美羽の身体を貫いて行った。
「忍にもうこれ以上近づかないで!」
美羽は言葉も出なかった。
母は何を、どこまで知っているのか、そんな事を聞ける雰囲気ではなかった。
そして何より、忍に対する母の感情に、美羽は異常なものを感じ取った。
蒼白になる美羽に奈緒は冷笑を向けた。
「いい事を教えてあげるわね。
忍はね、ああ見えて、意外と一途なのよ。
あの子は、もう十年以上も前に亡くなった、たった一人の女を追い続けてる。
忍はもう誰も本気で好きにはならないと思うわ」
美羽のまったく知らなかった話を淡々と語る奈緒。
ぞくりとするほど冷たい声が愕然とする美羽を追いつめていった。
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